die-in(ダイイン)
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鳩山発言、その後いろいろ
若干古い話題で申し訳ないが
◆「自動的な死刑執行」考えぬ、と政府答弁書決定 読売新聞(07/10/23)
◆自動的な死刑執行、必要ない=政府答弁書 時事通信(07/10/23)

この答弁書が出る発端となったのは、死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90の主催で10月13日に行われた「響かせあおう 死刑廃止の声2007」である。このイベントには鈴木宗雄議員がゲストトークに出演しており、最後にフォーラム90からのお願いとして、ぜひ今回の自動執行発言に対する質問書を出して下さいと呼びかけがあった。
それに答えて2日後には質問主意書が出され、ニュース記事にある答弁書はそれに対する返答である。
発言自体について私は、こんなことは(少なくとも今の時点で)実効性が微塵も無いし、死刑廃止の立場だけでなく存置の立場(政治・行政)からしてもアリエナイので、舌下事件に過ぎないと思っていた。だから、こうした答弁が出てくるのは「そりゃそうだろ」って話だが、この答弁書を引き出したことには意味があると思っている。
ただ本当に問題なのは、こうしたアリエナイ発想をし、それを現実に口に出して発言してしまう感覚(司法感覚・人権感覚・外交的にKY)の人が法務大臣の座にいることだ。

さて一方で、当の鳩山大臣は10月26日付け(発売は19日)の週刊朝日で発言の真意について語っている。
死刑制度のあり方、弁護士の増員計画、裁判員制度などについて、5ページに渡るインタビュー記事だ。インタビュアーは「官邸崩壊」でおなじみのジャーナリスト、上杉隆である。記事で説明されている「発言の真意」をふまえ、改めてこの鳩山発言について考えたい。


週刊朝日「私が死刑を執行する理由」より
<>以下は私による記事要約。<>は私による意見・疑問・突っ込み。)

<発言の真意について>
発言については真意が伝わっておらず、死刑廃止議連の亀井会長のように「人間の資格も無い」などというのは、むしろ亀井議員の人権感覚の低さを露呈するものだ。
死刑は取り返しのつかない処罰であり、慎重を期さなくてはならないことは承知している。再審・恩赦の可能性や、死刑囚が心神喪失状態にないかなどの確認は厳格に行われるべきだ。
私は死刑廃止論者の声にも耳を傾ける考えでいる。亀井議員と会うつもりは無いが、保坂展人議員にはお会いするつもりだ。
存廃も含め、様々な議論がある中で私は強烈な問題提起をしたつもりだ。実は死刑制度について一番触れてほしくないのが法務省の役人であり、タブー視されている死刑制度について誰かが問題提起しなくては話が進まない。

<議員との面会について>
実は亀井議員は、個人として面会を申し入れたのではなく、死刑廃止議員連盟(の代表)として面会を申し込んだようだ。とすれば、それを断っておきながら、同じ議員連盟の事務局長である保坂議員とは会う根拠は何なのか。「俺の悪口言う奴とは付き合わないもんね!」という子供じみた理屈なのかしら。
いずれにしろ、一日も早く保坂議員との議論が実現することを願う。
<問題提起‥‥?>
このインタビュー記事全体を通して鳩山大臣は、軽率と思えたあの発言を「考えた末の問題提起だった」と述べている。
当初報道された発言の一部からすると、印象の違いにアレ?となる部分も多いのだけど、当初の会見でも確かに「問題提起である」旨は述べている。報道自体も、衝撃的な部分だけを取り上げたものだったことは事実だろう。
しかし、先のニュース記事にあるような「併せて再審の有無等について慎重な検討の必要性」について発言している部分は特に見当たらないのだけど。


<大臣によって執行頻度が異なることについて>
絶対におかしい。私の発言について世論の8割が支持している。
<世界と日本での死刑廃止について>
死刑制度については存廃も含めて冷静に考えたいと思っており、EUなど世界の潮流が廃止に向かっていることも承知している。しかし今の日本では、廃止できる段階には無い。
日本人は命を尊ぶが故に、命を奪うような行動は「死をもって償うべき」との考えがある。欧州は力と闘争の文明だから死刑を廃止しても良いとの考えになる。もともと命を尊ぶ思想は(欧州のほうが)日本人より弱いから、死刑が無くても良いとの発想になる。そうした文明論をまず理解すべきだ。

<「世論の8割が支持」ってまさか‥‥>
「世論の8割」って数字はどこから出てきたのでしょうか。最初は死刑存廃について存置が8割という意味かなーとも思ったのですが、しかし「私の発言について」だからね。存置派の元最高検検察官・土本武司も自動執行発言は批判しているわけで、存置=自動執行賛成とは限らない。
でも、内閣府などが鳩山発言への世論調査を行ったとも聞かないし。
まさか‥‥一国の大臣が、たかがWeb投票を「世論」と思ってるわけじゃありませんよね?
<日本的な死生観の問題>
この「死んでわびる」こそが私の死刑廃止論の原点だ。01~03年にかけて法務大臣だった森山眞弓も、死刑存置の理由として同じ趣旨の発言をしている。もちろん、今の時点において「死んでわびる」という死生観・責任感を多くの日本人が持っていることは事実だろう。
しかし、それを温存すべきかは別問題だ。これじゃ、松岡大臣が自殺したときに「死んで詫びた、彼も侍だった」と述べた石原都知事と同じだよ。
<欧州は人命軽視!?>
鳩山大臣が外務大臣でなくて良かったと心底思う。
「欧州は命を尊ぶ思想が弱いから死刑を廃止している」なんて、あんたそんなこと言って大丈夫ですか。私が欧州国民ならブチギレますけど‥‥。
廃止国が増加する中「外国がどうだろうが、日本は日本」として存置論を展開するのはいいでしょう。ただ、それは司法制度上の違いであったり、被害者・遺族へのサポート体制の違いなどを問題にすべきで、「日本人のほうが命を大切にしてるから」ってのは失礼極まりない発言です。
人命尊重や人権の観点から死刑廃止に至った国も少なくないわけで、そうした国々からすれば「命が大事だから殺す=存置」「命を大事だと思ってないから殺さない=廃止」って理屈はかなり理解不可能だと思われる。


<「自動的」発言の真意>
「自動的」という言葉が独り歩きしている。最終的には大臣の署名が必要だが、それまでの段階で専門家がきちんと検証・判断できないかと考えている。冤罪の可能性を限りなくゼロにし、再審・恩赦・本人が心身喪失かなどの条件を専門家が判断した上で、大臣がすんなりハンコを押せる状態にすべきだ。

<専門家による検証・判断>
この点はまったくもって同意する。というか逆に、今は冤罪の可能性が高くても、再審・恩赦の可能性があっても、心神喪失状態の可能性があっても執行されているということで、そのほうが大きな問題だ。
こうした詳細な検討を求めることが発言の真意なら、問題提起としては賛同できる。ただ、そのような制度改革に向けて、多くの議員、そして何より法務大臣自身が尽力しなくては、官僚が「自動的に」慎重な検証をするようにはならない。だから「厳密な判断ができるよう、私が全力を尽くします!」と言うなら分かるし、応援しても良い。
しかし後半の議論を見ても、なにかにつけて「それは官僚の怠慢だ」「それは国家公安委員長に言うべきだ」と責任転嫁が激しく、面倒なことをやりたくないだけにしか見えない。


<執行までの期間について>
刑事訴訟法では半年以内で執行とされているのに、実際は執行まで平均7年半であり、一種の違法状態だ。法務省が違法状態を作っているようでは法治国家といえず、法務省が法の要請に答えていない。
<死刑廃止国と日本の裁判制度>
(執行までの期間が長いのは)世界的に廃止国が増えているので、その影響を受けているのだと思う。しかし廃止国を調べてみると、罪を犯した人への厳しさは日本の3倍、4倍ある。例えば英国では黙秘=認めたことになるし、一事不再理を認めない国も多い。つまり欧州のほうが犯罪人に対して刑法上は厳しいが、死刑制度は無い。

<日本の裁判は厳しくないのか>
廃止国のほうが基本的に重罰だから、その代わりに死刑が無い。って議論なら分かる。
しかし、裁判制度が被告人にとって厳しいから死刑が無い、って議論はいかがなものか。黙秘や一事不再理について厳しい規定の国があっても、じゃあそういう国で代用監獄や弁護士の立ち会えない取調べ、長期交流がされているんでしょうか。
日本だって十分に「被告人に厳しい(不利益な)取調べ制度&裁判手続き」で、その点について国連やアムネスティなどから再三注意されているわけですが。
それにしても、先の「世論の8割」にしろ、根拠の分からない数字を前提にした議論が多い。いったい、何を基準にしてどこがどう「3倍、4倍」なのだろうか。


<死刑制度と冤罪>
Q:死刑廃止論の中で冤罪の問題は大きな要素だ。冤罪事件で公判請求をした検察官や、有罪判決を下した裁判官にペナルティを課すことはできないのか?
A:(富山の事件では)自白した内容を一度は撤回し、また認めている。自白以外の証拠を重視すればよかった。読売新聞では弁護人まで批判していた。
Q:ミスをゼロにすることは不可能でも、失敗した人間に処分が無いのはおかしいのでは? 起訴した検察官にペナルティが課せられれば慎重になるのでは?
A:慎重になりすぎても困る
Q:しかし原則は「疑わしきは罰せず」ではないのか
A:あなた方の考えは重く受け止めたいと思うが、検察官が元気なくなっても困る。
Q:もし民間企業であれば、冤罪を出した裁判官が同じ仕事をやっていることは考えられない。
A:逃げるわけではないが、むしろ国家公安委員長に言うべきことかもしれない。いずれにせよ意見は重く受け止めるが、角をためて牛を殺しても困る。

<冤罪の防止策について>
大臣が署名する前に厳密な検証をするべきだ、というのが本当に「発言の真意」なら、冤罪の問題こそ積極的に考え、問題提起をし、制度を見直してて当然のハズ。
なのに、冤罪の話になると驚くほど逃げ腰ですよ。もう、突っ込みどころが多すぎて、どこから手をつければ良いやら。
もともと、鳩山大臣は取り調べの可視化についても極めて否定的だ
「疑わしきは罰せず」は「あなたの考え」ではなく近代司法の大原則なんですけど‥‥。
まー、なんだ。
「嫌な思いをせずに署名したいけど、そのために面倒なことするのも嫌」ってそういう感じ?


と、ようやく長文を書き終えた矢先、またしても鳩山重大発言大臣がご活躍です。
◆死刑確定から執行までの期間、法改正で延長も・法相
◆死刑執行までの期間 法改正も 鳩山法相
◆「絞首刑、もっと安らかな方法は」 法務委で鳩山法相
大臣の意見には賛同できない部分が極めて大きいわけですが、今まで国会でもタブー視されて議論が活発でなかった死刑制度について、ここまで質問・答弁が繰り返され、報道されているのは大きな変化です。
それもこれも、鳩山大臣が今までのように「黙って隠したまま存置」ではなく、「表立って執行推奨」とも取れる過激な発言をし、味方(存置派)すら敵に回して問題を表面化させてくれたオカゲです。これは安部前首相が「とにかく改憲!」と過激に訴えたことで、きちんと議論されないまま解釈改憲が続いてきた状況から、正当な憲法議論が広まり・深まったのと似ています。
自分にとってリスクになるとも考えずに軽率な言動をする人が、首相や大臣になる状況を見ると、既に自民党は「自爆体制」に入っているのでしょう。

【関連】
保坂展人のどこどこ日記「鳩山法務大臣と「死刑制度」をめぐって議論を開始(議事録付)」
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【2007/10/28 12:19】 | 死刑制度 | トラックバック(4) | コメント(3) |
<<鳩山大臣、マサカだったのね(T_T) 【おまけ追記】 | ホーム | 引っ越しました>>
コメント
 私も、鳩山さんの発言が、死刑論議の契機になればいいと思います。
【2007/10/30 12:43】 URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集]
引越し先へのご来訪&コメントありがとうございます。
鳩山発言が無ければ、今までのように議論にならないまま、淡々と大量執行がなされる状態になっていたと思います。その意味では、この発言への波紋に期待したいですね。
【2007/10/29 13:55】 URL | ささきち #IO3e0EY.[ 編集]
TBありがとうございます。

「米国/死刑制度:死刑執行の一時中止相次ぐ」というニュース、そして国連総会に死刑執行の一時停止を求める決議案が出されるらしいというニュースを見ますと、世界は動いているなと思います。
この動きの中で、鳩山法相の場当たり的発言が何を生み出すか、楽しみでもあります。
http://www.news.janjan.jp/world/0710/0710123842/1.php
【2007/10/28 19:58】 URL | 円 #aIcUnOeo[ 編集]
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衆院法務委員会での鳩山法相の発言を検討~刑訴法475条2項「6箇月以内」の期間延長の要否
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だからぁ、「死刑廃止」云々の問題じゃなくてぇ
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(人気blogランキング参加中) 鳩山邦夫法務大臣の「署名なしで死刑執行を」発言。 いろいろな人がコメントしているけど、私が同意するブログをとりあえずいくつかリンク。 13日の水曜日 呆然… http://azuryblue.blog7 村野瀬玲奈の秘書課広報室【2007/10/28 13:45】
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